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研究ハイライト

成果報告

大質量星形成領域 IRAS 07427-2400 の観測から、渦状腕理論の解明に迫るヒントを発見!

画像
IRAS 07427-2400の近赤外線画像。拡大図は中心星周囲の円盤部で光っている高温の水素分子ガス (出典)

国立天文台の坂井伸行氏を中心とした研究チームは、VERAを用いて大質量星形成領域 IRAS 07427-2400 の水メーザー観測を行い、年周視差や固有運動を計測しました。
得られた観測結果は、渦状腕の理論として知られている密度波理論(※1)によって上手く説明できることが分かりました。また、渦状腕を構成する星とガスの分布に、3千光年を超える大きなズレが見られる可能性も明らかになりました。

赤外線源 IRAS 07427-2400 は、銀河系にある大質量星形成領域です。(左図)

研究チームは2012年1月から2013年9月にかけ、VERAを用いて、のべ 9回の観測を行いました。
その結果、年周視差は 0.185 ± 0.027 mas、地球からの距離は約 5.41 kpc(=1万7640光年)、固有運動は東西方向が -1.79 ± 0.32 mas、南北方向が 2.60 ± 0.17 mas、非円運動の大きさは約 8 km/sと算出されました。
今回の測定結果をもとに、この天体が銀河系の渦状腕であるペルセウス座腕(※2)に位置していることも分かりました。(図1

更に、この天体が示す非円運動の向きは銀河系中心と反対側を向いており(図2の黒矢印を参照)、「銀河系円盤の内側と外側で非円運動の向きが反転する」という密度波理論の予測を使って説明できることが分かりました。
また、密度波理論モデルを観測結果に適用したところ、仮に密度波理論が正しければ、ガス密度が高い場所(図2の濃い黒色の領域)と星の分布を表す渦状腕ポテンシャル(青色の領域)との間に、大きなズレが得られる可能性が明らかになりました。

これらの成果から、今後、実際の星の位置天文観測の結果を加えていくことが、渦状腕理論(密度波理論)の検証(ズレの有無の検証)に繋がり、渦状腕の力学や進化の理解に欠かせないと考えられます。


※1:渦状腕の理論(密度波理論)
渦状腕構造を、宇宙年齢(〜138億年)程度維持するために提案された仮説。
車の渋滞に例えられることも多い。すなわち、渋滞(=渦状腕)を構成する車(=星やガス)の先頭は渋滞を抜けていくが、後続から新たに車がやってくるので、渋滞のパターンは維持され続ける。
渦状腕(の重力)ポテンシャルのパターンを銀河円盤に当てはめることで、簡単に銀河円盤の力学を考察できるため、これまで多くの研究者に採用されてきた。

※2:ペルセウス座腕
「ペルセウス腕」ともいう。英語表記は「Perseus arm」。


fig.1
図1:天の川銀河の想像図に、IRAS 07427-2400の距離測定の結果(左上の黒矢印)と、
過去の位置天文観測の結果を重ねたもの。
が、ペルセウス座腕の天体。
赤色の実線と黒色の破線は、ペルセウス座腕の形状を説明するモデル。
*1 kpc = 約3260光年

fig.2
図2:渦状腕理論モデル(密度波理論モデル)を観測結果に適用して得られた結果と、実際の位置天文観測データを重ねたもの。
渦状腕理論に準拠したモデルが予測する非円運動ベクトル(赤矢印)、ガス分布モデル(黒点)、
渦状腕ポテンシャルモデル(青色)。
位置天文観測で得られた天体の位置(ペルセウス座腕の天体は)、非円運動ベクトル(黒の矢印)。



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