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成果報告その他の報告

研究ハイライト

成果報告

VERAと野辺山45m鏡の観測で、長周期変光星の星周構造が明らかに!

鹿児島大学の親泊(おやどまり)美哉子氏を中心とした研究チームは、VERAと野辺山45m電波望遠鏡を組み合わせて長周期変光星の観測を行い、4天体の一酸化ケイ素ガス分布を明らかにしました。

fig.1
図1:本研究における観測天体の可視光合成画像。左から順に、T Cep(ケフェウス座T星)、W Hya(うみへび座W星)、WX Psc(うお座WX星)、R Leo(しし座R星)。ハワイ大学など複数の研究・教育機関で運用されるPan-STARRS(※1)によって撮影されました(著作権について※2)。

長周期変光星の周囲に存在する一酸化ケイ素ガスは、複数の周波数帯で電波放射をします。この放射の原因は、放射1(42.820582 GHz)と放射2(42.519340 GHz)の空間分布を調べれば分かります。ふたつの空間分布が一致する場合は水分子からの中間赤外線放射がきっかけで、一致しない場合は水分子と一酸化ケイ素が衝突することで、放射が起こるというのです。しかしこれまで、それぞれの放射の空間分布を比較する研究は、十分に行われていませんでした。

上記の謎を解き明かす観測が、2012年3月と5月に、国立天文台のVERAと野辺山45m鏡を組み合わせて行われました。長周期変光星12天体を観測し、11天体で電波信号の検出に成功しました。そのうち4天体(図1)では、空間分布の取得にも成功しました(図2図3を参照)。

fig.2
図2:野辺山45m鏡とVERAの観測結果 (Oyadomari et al. 2018より)。
(上段)左から順に、T Cep、W Hya、WX Psc、R Leoを観測して得られた、一酸化ケイ素ガスの電波信号。(静止)周波数(※3)は、42.820582 GHz(v=2と表示=本文中での放射1)。黒色の線は、野辺山45m鏡単独で得られた電波信号。灰色の線は、野辺山45m鏡とVERA水沢局を組み合わせて得られた電波信号(VLBI(※4)モード)。Φ=0と1が、変光星の(可視光での)明るさの極大期に相当する。
(下段)上段と同じ天体の電波信号。ただし静止周波数が、42.519340 GHz(v=3と表示=本文中での放射2)。

撮像解析に成功した4天体の内、T Cepにおいては、放射1と放射2の分布が、よく一致していました(図3参照)。一方残りの3天体では、両者が離れて分布していました。同じ長周期変光星の中で、放射1と放射2の空間分布に違いが出た理由については、変光星の明るさが周期変動する段階の違いが主要因として考えられますが、現段階では観測数が不足して決着できません。研究チームは、2017年にもVERAと野辺山45m鏡を組み合わせた観測を継続しており、様々な変光段階における観測結果が間もなく公開されます。

本研究によって、長周期変光星の物理環境の多様性が明らかになりました。今後は更に、明るさの周期変動との関係が詳しく分かることも期待されます。

fig.3
図3:野辺山45m鏡とVERAの観測結果 (Oyadomari et al. 2018より)。 左上から時計回りに、T Cep、W Hya、R Leo、WX Pscを観測して得られた、一酸化ケイ素ガスの空間分布。緑色の等高線が、図2でv=2(放射1)と書かれている、一酸化ケイ素ガスの分布。赤色の等高線は、v=3(放射2)の分布。円状の破線は、恒星を中心に、一酸化ケイ素ガスが対称的に分布することを仮定して描かれた線。


※1: Pan-STARRS : the Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System の略. 下記の機関によって管理・運用が行われている. 一部の機関は、財源補助を行っている.
the Institute for Astronomy, the University of Hawaii, the Pan-STARRS Project Office, the Max-Planck Society and its participating institutes, the Max Planck Institute for Astronomy, Heidelberg and the Max Planck Institute for Extraterrestrial Physics, Garching, The Johns Hopkins University, Durham University, the University of Edinburgh, the Queen's University Belfast, the Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics, the Las Cumbres Observatory Global Telescope Network Incorporated, the National Central University of Taiwan, the Space Telescope Science Institute, the National Aeronautics and Space Administration under Grant No. NNX08AR22G issued through the Planetary Science Division of the NASA Science Mission Directorate, the National Science Foundation Grant No. AST-1238877, the University of Maryland, Eotvos Lorand University (ELTE), the Los Alamos National Laboratory, and the Gordon and Betty Moore Foundation.

※2: Copyright: (画像閲覧・処理ソフトAladinの著作権) (c) Universit? de Strasbourg/CNRS 1999-2017 - distributed under GPL V3

※3: 静止系(〜視線速度0 kms-1)での観測周波数。

※4: Very Long Baseline Interferometryの略。遠く離れたアンテナを組み合わせて観測することで、高い空間分解能(望遠鏡の視力に相当)が達成できます。


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