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研究ハイライト

成果報告

世界初!新データ取得システムOCTAVE-DASで、一酸化ケイ素・4輝線同時VLBI観測に成功!

光結合・アナログ-デジタル変換器 (OCTAD).
光結合データ取得システム(OCTAVE-DAS)の一部で, アナログの電気信号をコンピューター処理し易い様に, デジタル信号に変えています. 変換されたデジタル信号は, 光ケーブル(図中の黄色いケーブル)を使って記録装置(OCTADISK)に送られます. (提供:国立天文台)

国立天文台の小山友明氏を中心とした研究チームは、VERAの観測感度や効率を向上させるために、新しい光結合データ取得システム、OCTAVE-DASを開発しました。
OCTAVE-DASをVERAに搭載し、W Hya(“漸近巨星分枝”に分類される古い星)からの一酸化ケイ素放射を観測したところ、世界で初めて4つの電波周波数帯における一酸化ケイ素を、同時にVLBI観測することに成功しました。

研究チームは、これまでVERAで観測できなかった暗い天体を観測したり(※1)、複数回に分けて観測していた別々の電波放射を同時に観測したりするために、従来に比べて8倍の周波数帯域を同時に観測できるデータ取得システム(OCTAVE-DAS)を、新たに開発しました(上写真)。
このOCTAVE-DASをVERAや野辺山45m電波望遠鏡に搭載し、2013年5月〜6月にかけて延べ6回の観測をW Hyaに対して行いました。その結果、4つの異なる一酸化ケイ素放射を、同時に観測することに成功しました(図1)。

また、研究チームが4つの放射源の相対位置を調べたところ、v = 3の放射源が、v = 2やv = 1に対して、より外側に位置していることが分かりました(図2)。これまで励起温度(※2)が高いv = 3の放射は、v = 2やv = 1に対し、より中心星(W Hya)に近い場所で発生していると考えられていました。今回の観測結果は、古い星の周辺環境に対する従来の考え方について、再考を迫る結果です。

今後もOCTAVE-DASを使い、これまで観測が難しかった暗い天体や同時性を必要とする天体(例:複数の観測周波数で明るさが変動する天体)の理解・研究が、更に進められていくことが期待されます。


※1: 観測感度は、(周波数に対して連続的に強度が変化する)連続波を放射する天体の場合(太陽光の虹も連続波放射の一例)、観測帯域幅の1/2乗(ルート)で良くなります。

※2: ある系の粒子の励起状態に基づいた温度を、「励起温度」と定義しています。もし系が熱平衡状態であれば、励起温度は運動温度(例:空気の温度)と等しくなります。


fig.1
図1:VERAにOCTAVE-DASを搭載して得られた, W Hyaの電波スペクトル.
縦軸は電波強度, 横軸は天体のドップラー速度(高速道路の自動速度取締機と同じ原理で測られている)を示します. 異なる線種は, 様々なエネルギー状態にある一酸化ケイ素から放出される電波を示しています (v = 3 → 42.519340 GHz; v = 2 → 42.820582 GHz; v = 0 → 42.879850 GHz; v = 1 → 43.122027 GHz).
(提供:Oyama et al. 2016, 「日本天文学会 欧文研究報告 (PASJ)」より転載)

fig.2
図2:W Hya(図1)の空間分布図. 縦軸が北方向, 横軸が東方向のオフセットを示します.
座標原点は任意の場所. 破線は, v = 2の分布モデル(リングモデル)を示しています. 図の左下に, それぞれの分布に対応する色が示されています.
(左) v = 0, 1, 2の分布. 観測(2013年5月9日に実施)には, VERAと野辺山45m鏡が参加しました.
(右) v = 1, 2, 3の分布. 観測(2013年5月27日に実施)には, VERAのみが参加しました.
(提供:Oyama et al. 2016, 「日本天文学会 欧文研究報告 (PASJ)」より転載)



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