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成果報告その他の報告

研究ハイライト

成果報告

大質量星形成領域AFGL5142における不定間隔なアウトフローの検出に成功

JIVE (※1) 所属のRoss A. Burns氏を中心とした研究チームは、VERAを用いて大質量星形成領域AFGL 5142の水メーザー観測を行い、年周視差や、天体内部における固有運動(以下、内部固有運動)の精密計測を達成しました。

AFGL 5142は、ぎょしゃ座に位置する大質量星形成領域で、東西南北の計3方向に噴出する複数のアウトフロー(物質の流出)が確認されています。複数の星の赤ちゃん(原始星)の存在と、現在もなお活発な星形成活動が行われていることで有名な天体です。

fig.1
図1:(左)AFGL 5142の中間赤外線3色合成図。出典:NASA/IPAC Infrared Science Archive, Spitzer, IRAC
(右)アンモニア輝線の空間及び温度分布(赤い部分はアウトフロー(白い矢印)により生成されたショックで暖められていると推定)。中心付近に複数の原始星が混在。出典:Zhang, Q., et al., (2007), ApJ, 658, 1152

本研究の主目的は、「大質量な星(※2)は、太陽程度の軽い星と同じ仕組みで形成・成長出来るのか?」という、現在もなお謎の多いテーマに新たな知見を与えることです。

研究チームは、2014年4月〜2015年5月にかけて、AFGL 5142に対する約1年に亘る計7回の水メーザーVLBI観測を実施しました。その結果、これまで曖昧だったAFGL 5142の天体距離を、年周視差計測の結果に基づき2.14+0.051-0.049kpc (=6980 光年)と高精度に求めることに成功しました。
また、過去のVLBA(※3)を用いた観測で検出されたAFGL 5142水メーザーの内部固有運動に加え、新たな水メーザー成分の検出と内部固有運動の計測にも成功しました。
それにより、AFGL 5142におけるアウトフローが、不定間隔に噴出していることが明らかになりました。また、その噴出間隔は短くて10年程度、長くて100年以上と非常に幅広いことも判明しました。

今回の観測結果は、軽い星の形成領域でよく観測されている不定間隔なアウトフローが、大質量星の形成領域においても見られることを示し、同時に、原始星の成長に欠かすことの出来ないガスの質量降着も不定間隔な現象である可能性を示唆しています。これらは、大質量星が軽い星と同じ仕組みで形成・成長可能なことを示唆する重要な観測結果です。

今後、VERAにより同様な観測サンプルを増やしていくことで、大質量星の形成と成長に対する統一的な理解の進展が期待されます。

※1: the Joint Institute for VLBI European Research Infrastructure Consortium
※2: 太陽に比べ8倍以上の質量を有する星
※3: Very Long Baseline Array : アメリカの超長基線干渉計観測網


fig.2
図2:VERAの水メーザー観測結果。色付きの点が、各水メーザー成分を表し、色の違いは視線方向の速度に相当(青色が観測者に向かってくる方向)。矢印は本観測で検出された固有運動の向きと大きさを表している。左下図は、上図の破線で囲んだエリアの拡大図。右下図は、同様なエリアの拡大図で、赤色が本観測の水メーザー分布を、青色が過去にVLBA観測(2004年)で得られた水メーザー分布を表している。約10年に及ぶ観測の間で、水メーザーの出現位置が異なっていることから、中心位置(原始星の位置を示唆)からの不定間隔なアウトフロー噴出の様子が伺える。


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