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研究ハイライト

成果報告

大質量星形成領域 G006.79-00.25 に存在する円盤状構造を示すメタノールメーザー源の内部固有運動を検出

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中央付近が G006.79-00.25 (出典)

茨城大学研究員 杉山孝一郎氏(元山口大学)らは、東アジアVLBI網の7台の電波望遠鏡(VERA4局+上海25m望遠鏡+山口32m望遠鏡茨城32m望遠鏡)を用いて、大質量星形成領域 G006.79-00.25 に存在する6.7 GHz帯メタノールメーザー源の内部固有運動計測を行った結果、その運動が回転膨張運動を示唆し、原始星円盤の運動を示している可能性があることがわかりました。

今回の研究成果は、杉山氏を含む、山口大学教授 藤沢健太氏を中心とする研究グループによって2010年から行われてきた、大質量星形成領域に付随する6.7 GHz帯メタノールメーザー源38天体の統計的な内部固有運動調査プロジェクト(※1)の初めての内部固有運動計測結果です。

今回検出された G006.79-00.25 に付随する6.7 GHz帯メタノールメーザー源の内部固有運動は、1-10 キロメートル毎秒の大きさで、このメーザー源が示す楕円形状の空間分布に沿った反時計回りの運動傾向を示していることがわかりました。

さらに、得られた内部固有運動と視線速度を併せた三次元運動構造に対して、回転+膨張もしくは収縮の円盤モデルを当てはめました。その結果、回転速度+3±2 キロメートル毎秒、膨張速度+6±2 キロメートル毎秒の運動を持ち、天球面上で時計回りに140度傾いた軸上で我々に対して60 度(※2)傾いている、半径1260 天文単位(=約1900 億キロメートル ※3)の円盤の描像が示唆されました(図1の短破線の楕円)。

また、この膨張運動について、典型的なメタノールメーザー源の磁場強度を用いて見積もったところ、円盤構造自体が膨張しているのではなく、磁気遠心力に伴う円盤風により、円盤外側のガスが吹き飛ばされる運動に起因している可能性を示唆しています。

今後、本プロジェクトの進展により、大質量原始星の近傍の描像に迫る事ができるツールとして期待されている6.7 GHz帯メタノールメーザー源に関する様々な描像が統計的に得られる事で、原始星周辺の3次元運動構造がどのようになっているのかを明らかにする重要な鍵となる事が期待されます。


※1: Fujisawa et al. 2014, PASJ, 66, 31, “Observations of 6.7 GHz methanol masers with East-Asian VLBI Network. I. VLBI images of the first epoch of observations”

※2: 円盤を真横から見た場合の傾きを0度と定義

※3: 1天文単位=約1.5億キロメートル(地球と太陽の平均距離)

fig.1

図1:G006.79-00.25に付随する6.7 GHz帯メタノールメーザー源の重心位置(○)に対する内部固有運動の様子。
円錐形のプロットがそれぞれのメーザー成分の内部固有運動を表しており、円錐形が広がる方向に運動し、その広がりの大きさが得られた運動の不確定性を示しています。
また、長破線の楕円とその中心位置(+)はメーザー源の分布に対して最小二乗法で楕円分布を推定した結果、短破線と実線の楕円は2種類の円盤モデルの計算結果です。



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