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成果報告

大質量星形成領域 S269 のメタノールメーザーガスの固有運動の計測に成功

画像 国立天文台と山口大学の合同研究チームが、大質量星形成領域 S269 のメタノールメーザーガスの固有運動の計測に成功しました。

S269 は、VERA により太陽系から 1万7250±750光年の距離にあることが突き止められ、この観測当時は人類が三角測量を用いて計測した最も遠い天体でした。 >> 関連記事
(左の画像は名古屋大1.4m望遠鏡で撮影)

星形成領域のメーザーガスを時期を変えて VLBI 観測すると、メーザーガスが時間経過と共に動いて行く様子を見ることが出来ます。
しかし、S269 のような遠い天体では星の周囲のガスの動きが分かるのに時間がかかります。しかもメーザーガスの明るさはしばしば激しく時間変動するため、ガスが明るく輝いているうちに運動を見分けなければなりません。
このような理由から、これまで遠距離の星形成領域のメーザーガスの固有運動はあまり計測されていませんでした。

ところが大質量星形成領域の 6.7 GHz メタノールメーザーは、メーザー放射の中では比較的安定しており、数年以上に渡り輝き続けることが知られています。
国立天文台と山口大学の合同研究チームは、2006年と2011年に S269 のメタノールメーザーを VERA を含む日本の VLBI 観測網で観測し、さらに 1998年にヨーロッパで行なわれた観測結果とも比較しました。
その結果、S269 のメタノールメーザーガスの主な塊が1998年から2011年の13年間に渡って安定して存在していることが分かりました。そして、そのメーザーガスの塊同士が互いに離れて運動していることを突き止めました。この運動は、S269 の若い星からのアウトフローによるものと考えられます。

この観測には、VERA の他、山口32m望遠鏡茨城32m望遠鏡、さらに JAXA の臼田64m望遠鏡が参加しました。いずれも大口径で高感度な望遠鏡であり、遠方にある S269 の観測にとても重要な働きをしました。

fig.1
(上) S269 のメタノールメーザーの分布図。
  メーザーガスの塊 A と B は、1998年、2006年、2011年で安定して見られました。
  塊 C は、2006年と2011年の観測で検出されました。
(下) 塊 A を基準にした、塊 B と C の運動。A と B が時間と共に離れて行く様子が示されました。



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