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VERA10周年記念イベント

記念講演会

2012年10月6日、水沢VLBI観測所内の奥州宇宙遊学館にて、記念講演会が行われました。
そして講演に先立ち、高校生の発表がありました。

「金環日食を観測して月までの距離を測る」
 岩手県立水沢高校 鹿児島県立川薩清修館高校

画像 5月21日の金環日食の際に、VERAの観測局がある4つの地域の高校生が、同じ時間に金環日食を観測することで地球から月までの距離を測ることに挑戦しました。

当日の天候に恵まれた奥州市と薩摩川内市の高校生が、共同して観測結果を解析しました。

地球から月までの距離は、観測した月の中心と太陽の中心のズレを角度に変換して求めます。
しかし彼らにとって初めての試み。途中はなかなかうまくいかなかったけれど、失敗を重ねながら学習していきました。

最終的に、10%ほどの誤差で月までの距離を求めることに成功!(観測結果からの計算値=38万8723km、実際の距離=40万9000km)
その報告に、会場から温かい拍手が送られました。
 

「見えてきた天の川銀河の新しい姿」 国立天文台 准教授 本間 希樹

まずはVERAの原理や、水沢観測所の歴史を説明。そしてVERAの観測対象である銀河系へと話が進みました。
銀河系には、約2000億の星があるといわれています。我々は銀河系の中にいるのでその姿が見えにくいけれど、VERAは銀河系の測量をして、三次元構造の地図をつくろうとしています。

すでに30以上の天体の距離を精密に測り、これまで考えられていた距離を縮めたうえ、他の天体の解析も進んでいます。

「VERAは超高精度な分度器」で、目標精度は10μ秒角(約4億分の1度)。これは月面上の1円玉を地球から見分けられる視差(角度)です。

画像 そしてつい最近発表されたばかりの成果について。これまで精密に観測された天体の距離や固有運動を用いて銀河系の構造解析を行ったところ、銀河系の自転速度が10%増え、それに伴って質量が20%増える(ダークマター(暗黒物質)が予想より大量に存在する)ことがわかったのです。

会場を埋めた100名ほどの方々は、エキサイティングな成果に聞き入っていました。講演が終わった後も、高校生たちが熱心に質問をしていました。
 

「銀河鉄道と宇宙の生命」 国際天文学連合会長 海部 宣男 氏

画像 宮澤賢治は1924年頃に水沢観測所を訪れており、「風野又三郎」(風の又三郎とは違う作品)の中で水沢観測所のことに触れています。彼にとってとても印象的な体験だったようです。

賢治は「銀河鉄道の夜」を、星と死の童話として書きました。
その中で“死・あの世”の象徴とされた暗黒星雲ですが、天文学では、暗黒星雲から恒星・惑星が生まれることがわかってきました。

暗黒星雲の一番濃いところを、電波で観測しています。可視光で見ると真っ黒なところも、電波では分子の存在を捉えることができるのです。有機物の強い電波を発していることがわかります。

宇宙には有機物がたくさんあって、炭素は地球には存在しないほど長い鎖をつくります。最大で炭素11個を持つ有機物が見つかりました。
宇宙には水分もたくさんあります。液体ではなく氷の状態です。
そして、現在すでに700個以上の惑星が発見されており、地球ほどの大きさのものも見つかっています。

では、生物はいるか、第2の地球はあるか。
そのためには様々な条件が必要になります。例えば海と大陸の存在、オゾン・酸素の存在など。
今後、次世代望遠鏡も含めた更なる観測や研究が進むことを期待しています。

文学から暗黒星雲、生命や遺伝子まで、幅広くもロマン溢れるお話に、集まった方々の興味も尽きない様子でした。


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